企業年金の食い逃げ

1999.12.12(日)


 最近、退職給付会計制度の導入に伴って企業年金の積み立て不足という問題が新聞等に出る機会が増えている。積み立て不足の解消策を、いま考えているという企業も多いことだろう。
 積み立て不足の解消策としては、次の4パターンの対処法が考えられる。
負担の増加

企業拠出の増額
従業員拠出の増額
給付額の縮小

現役社員の給付縮小
既受給者の給付縮小

 これまでに公表された企業の例を見ると、企業拠出の増額と現役社員の給付縮小というパターンが多い。
 もともと企業年金というのは、企業が従業員に対して将来の給付を約したものであるから、企業拠出を増やすのが筋というものだろう。しかし、給付額を縮小しないと負担しきれないという企業もある。収益力に比べ分不相応な退職給付制度を過去に作ってしまったということであり、自分の分をわきまえたレベルに落とす必要があるということだ。
 では、実際に給付額を縮小する場合に、問題になるのは現役社員と、既に年金を受給しているOB・OGとの間の利害対立である。OB・OGは、企業から「給付額を減らしたいのだが」と依頼されても、それに同意さえしなければ企業側は何もできず、従前の受給額が保証される。受給しているOB・OG全員の同意を得なければ給付縮小はできない。多数のOB・OGがいれば、同意しない人が複数出てくるだろうから、実質的にOB・OGの給付縮小は不可能というのが現状。これに対し現役社員の場合は、従業員組合と合意すれば給付の縮小が可能である。給付を縮小しなければ企業が存続できないと言われれば、従業員組合としては応ぜざるを得ないだろう。そう考えると、現役社員の立場というのはOB・OGに比べて非常に弱い。このため、現役社員は自分が給付を受ける分を超えて、OB・OG世代に対し所得移転を余儀なくされる構造。
 そう考えると、今の企業年金制度は、OB・OGによる現役社員の人権侵害を容認しているとすら言えるのではないか。受給権の確保が不公平であり、現役社員のモラルダウンを招くこと甚だしい。
 この矛盾は、定年が近い現役社員に、特に辛い現実としてのしかかる。退職する年がホンの1年違うだけで、先に退職した社員が100の年金受給権を確保したのに対し、自分は80とか60の受給権かもしれない。そういう状況に置かれて、冷静に受け入れることのできる人間がどれだけいるだろう。そんな立場に置かれたとしたら、先に退職したOB・OGが年金の食い逃げ犯人に見えたとしてもやむを得まい。
 過去に誤った給付水準を設定してしまったツケを、現役社員だけに負わせるというのは、どうも納得がいかないと思うのだが、いかがなものだろう。同じ年金資産というパイを分け合うのであれば、現役社員もOB・OGも同じく負担を分け合うべきではないのか。
 軽々しく受給権の侵害をすることは否定されねばならないが、その結果、他人の受給権を侵害することまで認めるというのは悪平等である。企業年金の関連法令や行政指導は、そのことをもっと考慮する必要がある。

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