前から行ってみたいと思っていた、那須の三斗小屋温泉に出かけた。
23日の金曜日は曇りたまに雨といった感じの天気で、雲の中を車は山へと登って行く。「をひをひ、大丈夫かいな?」と、ちらっと天候への不安がよぎるものの、予約を入れてあるので今更引き返す気にもならない。那須ロープウェイの駐車場は多少の余裕がある。そこへ車を置き、ロープウェイで茶臼岳の9合目へ。
ロープウェイ山頂駅から三斗小屋温泉に向かうには、いくつかのコースがある。そのなかで比較的楽そうなコースということで、往路は牛が首から姥ヶ平を経由するコースを選択した。地図を見る限りそれほどアップダウンが無いかと思ったら、姥ヶ平から先が結構登ったり下ったりの繰り返し。後から考えれば、コース選びは失敗。それでも3時間まではかからずに到着。二軒あるうち、大黒屋旅館に投宿。
三斗小屋温泉は、栃木県内で唯一、歩いてしか到達できない温泉であり、秘湯と言われている。電気も通じていないので、自家発電に頼っている。このため、自家発電の止まる夜9時以降の灯りはランプだ。同じく秘湯と言われている奥鬼怒四湯(加仁湯、八丁の湯、日光沢温泉、手白沢温泉)は車道が通じているし、電線も通っているので、三斗小屋温泉が栃木県内最奥の秘湯なのだろう。
ここには大黒屋旅館と煙草屋旅館という二軒の温泉宿があるのだが、実態は山小屋みたいなものだ。さすがに相部屋にはならないものの、部屋の障子を開けると、隣の部屋との間に壁が無い。つまり、隣の部屋の話し声が障子一枚隔てて筒抜けであり、相部屋みたいな状態なのだ。なまじ壁があるだけに、隣の部屋に騒がしい団体が入ると悲惨なことになる。相部屋ではないため、配慮も何もなく団体で談話されると、話し声が遠慮なしに侵入してきて、騒がしいことおびただしい。壁も扉も薄いため、歩く音も戸を閉める音もよく響く。そんな中で快適にすごすためには、投宿者同士、登山宿としての配慮が必要。「旅館」という名称で勘違いしてはならない。
今回、私たちの部屋は高齢女性三人組と埼玉県内の高校教諭五人組という、遠慮も配慮も無い団体に挟まれてしまったため最悪の状況だった。登山宿(山小屋)だったら、消灯後は静粛にするというのがマナーなのだが、高校教諭五人組は遠慮なしに放談しまくり。「先生」というのは常識に欠けるという俗説を裏付けるような振る舞いで、早く就寝したい私たちにとっては迷惑千万。学校のくだらない話なんぞ聞かされたくないぞ。夜11時近くまで放談が続いたため、家内が「声がすごく通るので静かにして下さい」とお願いした。「旅館」と名前がついていたって山小屋なんだから、そのくらい自制しろよなぁ。寝付きの悪い家内は、このため熟睡できなかったそうだ。これで埼玉県の高校教諭というのはロクデナシというイメージが私に植え付けられた。
そして朝の4時すぎ、こんどは高齢女性三人組のほうが目を覚ましてしゃべり始める。これで私も家内も起こされてしまい、それっきり眠れない。早立ち(早朝出発すること)するわけでもないのに、そんな時間から騒がしくされるのも迷惑至極。女性に対し「おばさん」と言うのは好きじゃないのだが、この振る舞いはオバタリアンの所業としか言いようがない。
このように、隣人に恵まれないと悲惨なことになるが、その点を除けば宿はまっとうである。温泉は単純高温泉だが、少し硫黄分が混じっているらしい。浴室は小さい「岩風呂」と大きい「大風呂」の二つで、一時間毎に男女を入れ替えている。岩風呂の浴槽は三人くらい入れる。大風呂の浴槽は二つあって、それぞれ四人くらい入れるが、導湯口のある方はかなり熱い。野沢温泉大湯のぬる湯と同じくらいの熱さ。
登山後の重要事項・ビールについて言えば、缶ビール(キリン一番絞り)が500円で用意されている。冷蔵庫ではなく水で冷やしているが、結構よく冷えていて、湯上がりの甘露だ。
窓からは山並みを眺めることができる。
夕食のメニューは白身魚の煮付け、もやしの和え物、茄子の煮付け、キノコの煮物、漬け物、御飯、味噌汁という組み合わせで、メロンが付いていたのは驚き。7時前の朝食は温泉卵、海苔、漬け物、昆布の佃煮、御飯と味噌汁で、朝夕とも部屋に運ばれてくる。これで一人一泊8600円。帳場で勘定を済ませると、飴が三個入った袋を人数分くれる。帰路の非常食ということなのだろう。さすがに登山宿である。
帰りは三斗小屋温泉神社に立ち寄る。昔、日光東照宮の造営に従事した宮大工が湯治がてら彫ったと言われている彫り物は、それぞれのパーツを見ると手抜きで彫られているが、全体の構成を見るとやはり宮大工の仕事と思わせるだけのものがある。
三斗小屋温泉に引き返して8時前に出発し、峰の茶屋、牛が首経由でロープウェイ山頂駅に到着したのがほぼ2時間後。晴れた中を歩いていたら、あっという間に腕や首筋が日焼けしてしまった。
ロープウェイで下界に降りてから家内曰く、「良いところだけど、もう行かないよ」。やれやれ、そうなると次は奥鬼怒四湯か(笑)